2016年10月6日木曜日

本の紹介『Jドリーム』

2018ブラジルW杯に向けたアジア最終予選。
ちょうど「vsイラク」戦が終わりました。

久々に
日本vs中東
らしい試合を観た気がします。
あのヒリヒリした興奮はライバルと呼ばれる
「vsオーストラリア」でも味わえない。
(申し訳ないですが、他のライバルと呼ばれてる国には、
 勝っても負けても怪我しないように、としか思ってません。)


この対決に興奮を覚えるのには、
年代的なものが多分にあります。
つい本棚の奥から引きだしてしまいました。


Jリーグ創成期に描かれた
Jドリーム
(塀内夏子 講談社コミックス)

1993年Jリーグ開幕。
アメリカW杯からフランスW杯までが舞台です。

初のプロリーグもW杯も夢のまま終わった選手と、
新たな世代である主人公の「」。

サッカーにおける世代交代の悲喜。
勝利の興奮と敗北の苦悩。

読んでると、
感動というより苦悶します。
サッカー選手の喜怒哀楽を、わずかとはいえ、
共有できることでしょう。



あの頃の中東は強かった。
決して過去の栄光とは呼べない時代の日本サッカーが、
一番面白かった。


日本は常にチャレンジャーだったんです!



さて、
そのコミックスの中に「ユズリハ」の話があります。

春、若葉が出ると、前年の葉が落ちてゆく。
「譲る葉」だから「ユズリハ」。




世代交代の象徴のような植物です。



この『Jドリーム』ですが、
舞台は日本サッカーリーグがまだプロ化していない時代から始まります。
Jリーグ開幕間近に引退を余儀なくされた選手が、
主人公「鷹」をクラブに導きます。

その選手が負う、復帰するにも重大な怪我。
年齢的にも引退を余儀なくされる怪我でした。

結果、その選手は
プロ化を待たずして、
そして、
W杯初出場の可能性を間近にして
引退していきます。

絶望と後悔は、当たりどころのない怒り。
自らのプレイで引き起こしたとはいえ、
です。


世代交代


サッカーのみならず、
組織においては必然的に訪れる刻です。

本人がどれだけ現役を望んでも、
組織はいつまでもそのヒトに頼っているわけにはいきません。


一つの新たな芽が育つのを見計らって、
静かに地面に落ちていく一枚の葉。

組織たるもの
それを繰り返していかなければならないんです。

逆にいえば、
古い葉がいつまでも残っている組織は、
若手が育たないからなのか、
古い葉が、
成長とともにのびていく幹に
不自然にしがみつける環境にある、
ということなのでしょう。

ともすれば、
樹、すなわち組織の成長を妨げることになろうとも。

新たな世代の自覚と
古き世代の覚悟。

成長する組織とは、
そのバランスがきちんととれている組織、
といえるのではないでしょうか。



もう一つ。
印象的なシーンがあります。

鷹がフリーキックで無回転シュートを放つんです!

一時、
クリロナや本田が得意としていたアレです。

なにを今さら?

っていうか、
すでにブームも過ぎて無回転シュートをうつ選手すらいなくない?

たしかに。

でも、
この話が書かれたのは1993年から1999年にかけて。
本田が放った南アフリカW杯は2010年。

無回転シュートが広く世に知られる前のことです。
著者のサッカー熱 が強く感じられたのは私だけでしょうか?