2015年7月24日金曜日

本の紹介『聖エルザクルセイダーズ』

学園ミステリ
キリ教系のスクールに秘められた謎。

4人の女の子と男の子1人。

黒幕はイケメン男子で
「味方と思ってたのに…」
的などんでん返し。

ドタバタなテンションと
涙を誘うセリフ。


乱暴に描いてしまうと
めずらしくないお話です。


『聖エルザクルセイダーズ』
松枝蔵人
角川スニーカー文庫



ちょうどこの作品が発表されたのは
ラノベ黎明期
『コンプティーク』を読んでると
確実にオタク扱いされた時代でした。

ラノベという言葉ではなく
ティーンズ文庫とジャンル分けされていたころです。

世代が
第二次ベビーブーム
学歴社会の申し子と称された時代。

親には
「そんなマンガみたいな小説は
 絵がなくてもマンガだ!」
みたいに怒られました。

しかし、
自分にとっては
国語の教科書に載ってる文豪なんかより
はるかにハマった作品でしたし、
これまでの人生に影響を与えてくれたし、
最高傑作です。


構成もめずらしい作りで
章ごとに
キャラそれぞれの一人称と三人称が
入れ替わっていく形でした。

なので、
一般的な三人称作品では語り切れない
キャラ本人の深い気持ちの部分が
一人称部分で語られます。


また、
薀蓄じみた小ネタや謎解きパートも
エンターテイメントとしては
けっこう楽しめました。

「カクテルパーティ効果」とか
「壁に梯子をかける」問題とか
いまだに小ネタに使わせてもらってます。


正直、
中学生であった自分が感情移入したからこそ、
作品に対する評価が高くなってることは
否めません。

ミホ、姫、オトシマエ、チクリンの
女の子4人のドタバタ劇も
学生という
短く狭いけど、
とっても深い世界に築かれた人間関係も
自分にはない世界だったから
よけいに憧れたのかもしれません。


それでも、
いえ、だからこそ、
感情移入できない文豪の名作より
作中の、たとえ一文だとしても、
心に響く作品を読んでほしいなと思います。


「一期一会」
作中でヒロインが語られた話です。

私はいまだこの言葉を胸に人と接しています。






2015年7月23日木曜日

『鋼の錬金術師』と『終わりで始まり』

「歩きだせ」


叱咤激励してくれる場面は
珍しくありません。

親とか友達とか恋人とかの
だれかの言葉だったり、
自分自身に言い聞かせたり。

小説や漫画、
好きなアーティストが語りかけてくれることだって、
きっとあったはずです。

私にとってそれは

『鋼の錬金術師』
(荒川弘 スクエアエニックス)
の主人公エドワード・エルリックの
言葉であり、

amazarashiの歌う
『終わりで始まり』
でした。


まず
『ハガレン』第一巻。
神に見捨てられたと
途方に暮れる女性に
「歩きだせ」と
叱咤するエド。

それは
これから苦難の道を歩み続けるだろう
自分たちへの言葉でもあります。

「苦しいのはあなただけではありません。」
って言葉を暗に示し、
けっして押し付けたりはしません。
 
で、自分を憐れんだり、
不幸自慢もしないからこそ、
心にズシンと響きます。


そして、
『終わりで始まり』
(Album『あんたへ』収録 ソニーミュージック)

最近、ちょくちょくアニメの主題歌になり始めてる
amazarashiのアルバム曲です。
カラオケになってないのがとても残念。


歌われている「自分」は
力尽きて膝をつく「自分」。

いつか立ち上がる日を信じてた
「周囲のヒトビト」への感謝。


神は自ら助くる者を助く。
と言います。

誰かが立たせてくれても、
きっと
また膝をつくでしょう。
誰かがまた助けてくれる。
なんて期待して。

でも、
傷ついて、
それでも自分で立ち上がれば、
きっと
何度でもゆっくりでも
歩き続けることでしょう。




けっきょくのところ、
周囲の状況だったり、
そんときの精神状態だったりが
すべてなんですがね。

2015年7月21日火曜日

本の紹介『キノの旅』

現代版ガリバー旅行記。

第一巻を読んだとき、
真っ先に感じたことです。


『キノの旅』
 時雨沢恵一 著
 アスキーメディアワークス 
 電撃文庫


主人公は一応キノという若者です。
あえて若者って言ったのは、
性別が曖昧に描かれてるから。

それとモトラドと呼ばれる
しゃべるバイクです。
二人の掛け合いが旅中を退屈にさせません。


手にする武器は銃です。

著者が銃マニアだそうで、
訓練シーンや手入れのシーンは
興味なくとも
「なるほど」
とうならされます。


二人(一人と一台)は
滞在期間三日をルールに
いろいろな街に訪れます。

あと、
二組の旅人らが視点を変えて
街を語ります。
以前にキノが訪れていたり、
先に訪れた結果、変化した街に
キノが訪れたり。

旅人らしく視線はとても客観的。
街やそこに住む人々の矛盾
冷静に暴き出します。


そこに住む人々には
そこにしかないルールがある。

しかし、外から見れば
それが正義とは限らない。

結果、ヒトは
だれかの正義と自分の信じる正義を
選択し、それを信じ、従うしかない。


ってとこに
この話の面白さがあります。



正義を信じることの
難しさ
危うさ
大切さ

『キノの旅』
が教えてくれたことです。