2015年8月17日月曜日

本の紹介『かまいし千夜一夜』

岩手県釜石市の歴史についてご紹介します。

 『かまいし千夜一夜』
 (菊池弘 著:岩手東海新聞社 刊)


岩手県。
廃藩置県前の南部藩。
いつの時代も貧困にあえいでいました。


それを文学でつづったのが、
宮沢賢治です。


岩手をたびたび襲う冷害は
アニメ映画化しました
『グスコーブドリの伝記』
にも描かれていました。


さて、
釜石です。
大槌、山田、宮古含め海運業が発展します。
海運業の豪商の屋敷がある吉里吉里浜は
井上ひさしの『吉里吉里人』の舞台です。

北上山地の鉄鉱を釜石で製鉄。
製鉄所が一大産業として
釜石の歴史を作っていきました。

さらに
東北初の鉄道かつわが国初の
「国営産業専用鉄道」が
釜石鉱山鉄道でした。



そんな釜石の歴史は
格差社会の縮図のようでした。
利権争い、派閥抗争。
製鉄所がらみだけでなく
漁場収益をめぐる事件も発生します。

また、
あまり語られることはありませんが、
第二次世界大戦の艦砲射撃もひどかったとのこと。
なぜならば
東北唯一の重要な軍需工業都市だったからです。

今回の震災だけではなく、
たびたび津波にも襲われています。


ところで、
個人的、かつ第三者的な意見ではあるのですが、
釜石を訪れるたびに感じることがあります。


それは
町全体の統一性のなさ、というか
いうなら
「みんなでがんばろう!」的な雰囲気のなさです。


今回の震災の後
ほかの海岸都市と比べ釜石が復興前と雰囲気が変わらないな
と感じるのは
そんな歴史を経てきたからなのかもしれません。

この本を読んで多少合点がいきました。


現在
製鉄所は規模を縮小しています。
水産物もしだいに収穫が減っています。
三陸鉄道は震災で流されましたが、
なんとか復興してます。
企画列車にいつか乗りたいですね。


昔の面影はなくなりつつあるかもしれません。
しかし、それを嘆いていてもしかたがありません。
とりまく世界は変わっていきます。
古き良き時代を否定するつもりは毛頭ありません。
ただ、過去はあくまで過去とし、
新たな釜石に向かうときではないかな
と思いました。

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