2015年9月26日土曜日

『半分の月がのぼる空』と『君と月の光』

真昼の太陽は苦手。
月夜はホントの自分を隠してくれるから好き。


てなことを時々夢想してしまいます。


半分の月がのぼる空
(橋本紡・電撃文庫)
はそんな気持ちを代弁してくれるお話でした。


話の舞台は伊勢
主人公の男の子が病院で
不治の病に侵される 少女に出会うところから始まります。

何もない町に生きる空虚感。
14歳前後に特有の焦燥と諦観。

そんな少年。

かたや、
生を渇望しながら、毎日死に怯える少女。

少年は少女が生きるだけでなく、活きることを欲します。

絡み合う愛憎と喜怒哀楽は、
むしろ、
死を約束された少女を活かせてくれます。


君と月の光
(SOPHIA)
がこの小説のイメージにピッタリと感じるのは私だけでしょうか。

少女の冷たい指先を、
少年が温めてあげる絵が思い浮かびます。

静かに寄り添い、
穏やかな眠りに誘い、
時に、暗闇に迷うヒトを導き、
時に、陽の下にさらせなかった感情をぶちまける場を提供してくれます。

必ずしも正しくはなくとも、
目の前に広がるは、二人だけの世界。
そして、
暗闇から差し伸べられた友達や家族の手のひらのぬくもり。

ヒトは弱い。
不安に苛まれ、
暗闇に押しつぶされそうにもなります。
ニセモノのぬくもりだってあります。

それでも、
ヒトは独りじゃ活きられないんですよね。


ちなみに、
電撃文庫はラノベレーベルですが、
私が読んだのは文芸春秋の文庫で再編されたほうです。

あえて文春文庫だから選んだのか、
と問われれば、否です。
たまたま刊行されたのを買ったら、
もとラノベだっただけ。

まぁ、無知だっただけなんです。

機会あれば、
電撃バージョンも読み比べてみようかと思います。







2015年9月23日水曜日

本の紹介『ハヤチネ!』


宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』
柳田國男の『遠野物語』
井上ひさしの『吉里吉里人』

岩手県が舞台となった(舞台と思われる)小説は、
昔から多く存在します。

現代小説ではあまり聞かれませんが、
今回紹介するのは、
完全岩手


『ハヤチネ!』
(福盛田藍子・スクエアエニックス)

舞台は早池峰にほど近い内陸の大迫です。

遠野に代表される民話の宝庫岩手県を余すことなく、
というにはあまりに岩手は広すぎます。

それでも、
芸能文化あり、食文化あり、と話は多岐にわたります。



始まりは、
両親を亡くした子供三人が東京から引っ越してきたところから始まります。

都会と田舎とのギャップに戸惑う三人ですが、
受け入れる側の懐の広さにだんだんと心を開いていきます。

方言や文化、人間性の違いにぶつかり合いながらも、
ゆっくりと成長していく子供たち。

著者の郷土愛が存分に感じられる作品でしょう。



余談ですが、
作品中にでてくる「がんづき」というお菓子。
あれ、全国区のものだと思ってました。

普通にスーパーやコンビニに並んでたので。

数年前に訪れた岩手県陸前高田市の友達のご実家で、
手作りの「がんづき」を出され、
初めて郷土食だったことに気づかされました。
(恥ずかしながら、店で売ってるものは、
基本的にお菓子屋さんでしか作れないと思ってた)


同様に、
「だから」の使用法も全国区でないことに気づかされたのも、
ここ5年くらいの話。
私が「だからぁ」って言うと、
不思議そうに言葉を待つんですよね。

「だからぁ」は相づちです。

『ハヤチネ!』のおまけコーナーでは、
イントネーションの違いについて語られてました。

「か」の位置が上がるのが相づちの「だから」で、
理由をつなげるときは頭の「だ」が上がるのだそうです。

意識して使ったことなかったけど、
あらためて思い返すと、やたらに連発してて、
東北の外から来た人たちが混乱してたみたいです。


 やっぱ、地元本は楽しいですね。

2015年9月13日日曜日

本の紹介『B.B.Joker』

見知らぬ街をあてもなく彷徨いながら、
ふと、
一軒のアパートの前で足を止めました。

二階の窓を見上げて、もの思いにふけります。

あの娘は元気にしてるかな。
新しいカレシができたかな。
それとも、まだ独りでいるのかな。
友達も少ないヒトだったから、
淋しくしてなきゃいいけど。

独り実況中継とか。
ラジコンにパワーアップキノコ被せたりとか。
すごい腕立てとか。
さすがに止めたよな。

いつか幸せを手に入れて欲しい。
きっと、
ありのままの彼女を受け止めてくれるヒトが現れるから…


はい。
前フリが長いですけど、
コミック紹介です。

『B.B.Joker』
(にざかな 白泉社)

「グリーンハイツ202」
ってネタに登場する女の子のことでした。


作者はコンビで、それぞれ仙台市盛岡市の出身です。

だからってこともあり、
地元を彷徨ってるとつい
「グリーンハイツ202」を探してしまいます。
しかも、周囲の風景も確認して。

大学時代の友人が同名のアパートに引っ越した時は、二人大笑いしました。


閑話休題。
マンガの紹介に戻ります。

それ以外にも
やたらとシュールな4コマギャグが続きます。

あまりにブラックでシュールなネタなので、むしろ常識人にしか笑えません。
小学校時代の息子は
世の中の「あたりまえ」な知識が足りなかったゆえ、あまり笑ってませんでした。

しかし、
社会経験も経て、知識も増えた中学生になった今は、
大爆笑してます。

成長したなぁ…

いや、こんなんで子供の成長を喜ぶ親は、ダメじゃん。
なんて最近、物思いにふけります。